イナズマノベル2

第三十二話

第32話「衝撃」

雷門中の新しいストライカー・闇野 カゲトは、人知れず心に闇を抱えていた。

影山の部下である錬山は、そんな彼の心の隙に付け込み、『シュルトケスナー藻』を与えて能力を強化した。

シャドウの恐怖心は払拭され、更に強力なFWになったのだが…。

***

−FF大会事務局−

錬山と共にシャドウを見送った後、影山は大会事務局に戻り最上階から外の景色を眺めていた。

何処を見ても、人、人、人―――。

下界を見下ろせば忙しなく動く自動車の群れ、喧騒、排気ガス…。

この街は休むことを知らない。

人に限らず総てが、呼吸を止めない。止まらない。

しかし自分は違う。それに逆らって退行しようとしている。

もう一度、幸福だったあの頃を取り戻すために…。

???「へえ…いい眺めじゃないか。」

窓の外を眺める影山の背後で、若い声がした。

影山「お前か…。此処に来る時はノックするよう言ってあるだろう。」

曲がった背中を伸ばし、後ろに立つ少年に鋭い視線を飛ばす。

???「おいおい、爺さんが無理して背筋を伸ばすなよ。腰を痛めるぞ。…それより、此処に誰も来た気配が無いということは、どうやら俺が『一番乗り』のようだな。」

影山「フン…その通りだ。随分早かったじゃないか、御陵丸よ。」

御陵丸と呼ばれた茶髪の少年は、ポケットに手を突っ込み、威圧感のある両の眼を影山に向ける。

御陵丸「当たり前だ。俺は恐らく『マスターピース』一の俊足だからな。ゲームのケリを着けるのも、当然早い。」

影山「大した自信だな…。だが、まだ表立った動きはするな。お前達は『ノア計画』の切り札なのだから…。」

影山のサングラスの奥で、切れ長の目を光らせる。御陵丸は不敵に笑い、机に腰掛けて長い足を組んだ。

−雷門中−

円堂「よし、じゃあ…紅白戦やるか!」

重々しい雰囲気の中、キャプテンの円堂が決断した。シャドウが一之瀬の提案に賛同したため、『紅白戦やろうぜ』のような空気になっていた。

それを打破するようにわざと明るい声で円堂が宣言する。

壁山「でもキャプテン、誰がGKやるんスか?キャプテンしかキーパー出来る人いないッスよ。」

緑色アフロがもっともな意見を吐く。

円堂「心配は要らないさ。GKは此処にいる!」

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